なぜショートスリーパーは、わずか4〜5時間の睡眠でも脳と肉体を完全にリカバリーできるのでしょうか。この長年の謎を解き明かしたのが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の神経科学者イン・フー・フー(Ying-Hui Fu)教授らの研究チームです。
2009年、同研究チームは短時間睡眠家系のゲノム解析を行い、「DEC2」と呼ばれる概日リズム調整遺伝子の変異を世界で初めて特定しました。この変異を持つ被験者は、平均6時間未満の睡眠でも何ら健康障害を起こさず、通常の人々と同等以上のパフォーマンスを発揮していました。
さらに研究は進み、2019年以降には「ADRB1」遺伝子や「NPSR1」遺伝子など、複数の短時間睡眠関連遺伝子の変異が相次いで発見されています。これらの遺伝子変異を持つ人々の脳内では、以下のような特徴的な神経メカニズムが働いていることが判明しています。
- 圧倒的な睡眠効率:入眠後すぐに最も深いノンレム睡眠(徐波睡眠)に到達し、脳内の神経老廃物(アミロイドβなど)を通常人の数倍のスピードで洗い流す。
- 高密度なシナプス恒常性維持:日中の覚醒時に蓄積したシナプスの過剰な接続を、短い時間で効率的に選別・再編する。
- 強力なストレス耐性と活動性:神経伝達物質の感受性が高く、楽観的でエネルギッシュな気質(日中に行動力を保ちやすい生化学的背景)を持つ。
つまり、ショートスリーパーは「睡眠の必要量を無理やり我慢している」のではなく、「短時間で通常人と同じ修復プロセスを完了できる超高効率な生体システム」を先天的に備えているのです。