長門裕之という男がなぜそこまで奔放に振る舞えたのか。その根底には、日活株式会社の黄金期を牽引したスターとしての強烈な成功体験があった。石原裕次郎らと共に映画『太陽の季節』などで太陽族ブームの象徴となり、時代の寵児として持て囃された若き日々。道徳や常識よりも、情熱と衝動が優先された時代を彼は生きていた。
今村昌平監督による映画『豚と軍艦』で見せた彼の演技は、昭和シネマの歴史に刻まれる圧倒的な金字塔だ。横須賀の米軍基地周辺で蠢くチンピラ・欣太役を演じきった彼の肉体には、野性と脆さ、人間の業が生々しく宿っていた。表現者としての飛び抜けた才能があったからこそ、私生活の無秩序さもまた肥大化していったと言える。
表現者としての類まれなエネルギーと、実生活における身勝手な破滅性。昭和の映画スター特有の危ういバランスが、やがて時代が平成へと移り変わる中で許容されなくなり、あの暴露本という形の悲喜劇へと結実してしまった。