本作を語る上で欠かせないのが、劇中の音楽演出と徹底した美術へのこだわりです。
当時としては極めて異例だったのが、主題歌「youthful days」のみならず、劇中で流れるすべての挿入歌・インストゥルメンタル楽曲をMr.Childrenの既存曲で統一したという試みです。「君が好き」「Drawing」「CROSS ROAD」「抱きしめたい」など、桜井和寿氏の紡ぐメロディと歌詞が、パティスリーに漂う甘い香りと登場人物のほろ苦い感情に完璧にシンクロし、視聴者の情緒を強く揺さぶりました。
現場取材関係者の証言によると、撮影現場では実際に有名パティシエによる綿密な製菓指導が行われ、滝沢氏や藤木氏は撮影の合間にも果物のカッティングや生地のナッペ(クリーム塗り)を猛特訓していたといいます。画面に映し出されるケーキの数々は、当時辻製菓専門学校が監修・制作を担当し、深夜の放送にもかかわらず「見ているだけでケーキが食べたくなる」とスイーツ業界に特大の経済効果をもたらしました。
また、物語の象徴である洋菓子店「アンティーク」のロケ地について、当時「成城や世田谷の高級住宅街に実在するのか」とファンが殺到する現象が起きました。実際には、店舗の外観や街並みの一部ロケ撮影(代官山や世田谷周辺など)を除き、重厚なアンティーク家具やショーケースが並ぶ内装はフジテレビ湾岸スタジオの特設セットで精巧に組まれたものでした。本物のヨーロッパ製アンティーク家具を惜しみなく配置した美術スタッフの執念が、架空の店舗に圧倒的な実在感を与えていたのです。