売り場に並ぶバニラ製品には、主に「エッセンス」「オイル」「ビーンズ(原形)」の3種類が存在します。名称こそ似ているものの、製法、溶媒、熱に対する耐性が根本的に異なります。目的と調理工程に合わせて正しく選ばなければ、せっかくの香りが完全に失われてしまう原因になります。
エッセンスとオイルの最大の違いは、ベースとなる基剤です。エッセンスは水とアルコールを溶媒としているため、加熱による香りの揮発が激しく、100℃を超えるオーブン加熱では大半の芳香が空気中へ逃げてしまいます。「レシピ通りに作ったのに焼き上がったクッキーからバニラの香りがしない」という失敗の多くは、オイルではなくエッセンスを使ってしまったことが原因です。
また、バニラビーンズとの香りの比較を行うと、合成香料や単一抽出液であるエッセンスがシャープで直接的な甘さを放つのに対し、本物のサヤから削り取ったビーンズはウッディでスパイシー、かつ深みのある複雑な芳香を放ちます。日常のカジュアルな手作りや日用品活用にはエッセンスがコストパフォーマンスの面で秀でていますが、特別な日のカスタードやアイスクリームには本物のビーンズを使い分けるのが賢明な判断です。