歴史的なデザイナーたちもまた、生地という素材そのものに深い情熱を注いできた。かつてココ・シャネルは男性用下着素材であったジャージー生地やスコットランドのツイードを女性服に取り入れ、自由な動きと革新的なエレガンスをもたらした。一方、ジョルジオ・アルマーニは構造的な芯地を削ぎ落とし、生地本来の流れるようなドレープを生かした「アンコンストラクテッド・ジャケット」でメンズウェアの概念を一変させた。
こうした生地と衣服の緊密な関係性を美しく描いた作品が、映画『ファントム・スレッド』だ。1950年代のロンドンを舞台に、一針一針に執念を燃やすオートクチュール仕立屋の姿は、服地が持つ魔力と仕立て職人の美学を鮮烈に物語っている。