物語の軸をなすのは、主人公・幸田実果子と隣の家に住む幼なじみ・山口ツトムの関係性だ。幼少期から「隣同士」として育った二人は、お互いを誰よりも深く理解しながらも、思春期特有の照れや素直になれないプライドから素直な感情を表に出せない。実果子は自身のブランド「HAPPY BERRY」を立ち上げるという明確な夢を抱く一方で、ツトムが他の女子生徒から注目を集め始めると、激しい嫉妬と困惑に直面する。
一方のツトムもまた、実果子の存在の大きさに戸惑いながら、自らの造形制作に対する情熱を模索していく。二人の間に生まれるすれ違いは、読者に強い焦燥感と共感をもたらした。二人の関係をめぐる複雑な恋愛相関図には、実果子に思いを寄せる中須裕介や、ツトムの才能に惹かれる中須カエデといった魅力的な人物が絡み合い、単純な「幼なじみの恋」では終わらない重厚なドラマを構築している。自分の夢と愛する人への思いの間で揺れる二人の感情曲線こそが、本作を揺るぎない名作へと押し上げた最大要因だ。