現役時代の木俣には、ファンの間で長年語り草となってきた数々の知られざる秘話がある。指の骨折を隠したまま特製のグリップでバットを握り続けた執念や、対戦相手の捕手の呼吸・癖をベンチから徹底的に盗み見ていた観察眼。捕手目線で投手の球筋を逆算する独自の打撃理論は、現代のバレルゾーン理論や動作解析を先取りしていたかのような緻密さに満ちている。
近年、木俣が投げかける球界への提言もまた痛烈だ。「今の捕手は守備偏重、あるいはフレーミングばかりに目を奪われ、試合を支配する存在感が薄れていないか」――。自らバットで試合を決め、投手を叱咤激励して引っ張ってきたレジェンドだからこそ、現代のバッテリー陣に対する言葉には重みがある。打撃力と統率力を兼ね備えた真の司令塔の育成こそが、チームを常勝に導く絶対条件であると木俣は説き続ける。