抜けるような青空が広がっているのに、なぜか富士山の方角だけが真っ白な霞に覆われている――現地を訪れた多くの人が経験するこの現象には、明確な物理的理由がある。大気中の相対湿度、地表面の温度差による上昇気流、そして微小粒子状物質(エアロゾル)の滞留だ。
富士山周辺は標高3,776メートルという孤立峰であるがゆえに、太平洋から吹き込む湿った南風が山肌に沿って急速に上昇し、山頂周辺に局所的な笠雲や吊るし雲を瞬時に形成する。地上から見れば頭上は快晴であっても、山体周辺の相対湿度が75%を超えた瞬間、稜線の輪郭は肉眼から完全に奪い去られる。