だが、現在私たちが目にするこの景観は、古代の遺産であると同時に、20世紀の叡智が生んだ結晶でもある。1960年代、アスワン・ハイ・ダムの建設によって、神殿は完全に湖底へと沈む運命にあった。
世界を動かしたのはユネスコの呼びかけだった。50カ国以上が資金と技術を拠出し、前代未聞の救出作戦が始動する。巨大な岩山ごと神殿を20トンから30トンに及ぶ1000個以上のブロックへ精密に切断し、本来の場所より64メートル上方、180メートル内陸の人工ドームへと寸分違わず再構築したのだ。「太陽の奇跡」の角度を維持するため、計算には当時の最新鋭コンピューターが駆使された。現代のコンクリートドームに支えられた古代の砂岩。それは人類が遺産保護のために成し遂げた、最も壮大な連帯の証拠だ。