1971年、歴史と自然が交錯する奈良県に生まれた津田清和。彼が選択した表現媒体は、千度を超える高温で熔解し、冷却とともに固化する素材「ガラス」だった。
ガラス工芸の世界では、薄さと軽やかさを極限まで求める流派が少なくない。しかし、津田が惹かれたのはガラスという物質が持つ「質量」と「光学的な深み」だった。溶解炉の中で脈動するドロドロとした溶融ガラスの生命感。それをそのまま空間に留め置くための手法を、彼は試行錯誤の中で構築していく。
奈良に構えた自身の工房で、津田は日々窯と向かい合う。風土が与える影響は小さくない。静まり返った寺社や苔むした庭園、時間の経過が刻まれた古い木造建築。そうした周囲の景観や気配は、彼の作る硝子の内側に自然と溶け込んでいる。