山口百恵が1980年に出版した自叙伝『蒼い時』は、当時の社会に強烈なインパクトを与えた。その中で最も衝撃的だったのが、自身の出生にまつわる記述だ。彼女の父親には別に本妻がおり、百恵と妹は「婚外子」として生まれた。戸籍謄本の父親の欄に書かれた「認知」の二文字。それが、彼女が自らの出生の秘密を知るきっかけとなった。
幼少期、父親はたまに家に来るだけの不安定な存在だった。経済的な援助もほとんどなく、母親が内職をして姉妹を育て上げた。貧困の中で育った百恵にとって、父親という存在は温かい庇護者ではなく、時折現れては家庭をかき乱す「異物」に近いものだったのかもしれない。血がつながっているという事実だけが、彼らを結びつけていた。