暖簾をくぐると、威勢の良い板前の声とともに目に飛び込んでくるのは、カウンター越しに並ぶ圧巻のネタケースです。魚心本店を象徴するぶっち切り寿司デカネタは、シャリを完全に覆い隠し、皿からはみ出るほどのサイズを誇ります。昭和の創業期から続くこのスタイルは、大阪の「安くて旨くて腹いっぱい」という食文化の真髄を具現化したものです。
特筆すべきは、単に魚の切り身を大きくしただけではない点です。魚心には「巴(ともえ)握り」「重ねにぎり」「垂れにぎり」「落としにぎり」という独自の四大作法が存在します。たとえば、脂の乗ったハマチは身をくるりと巻いて立体感を持たせ、大穴子やウナギは贅沢に一本を丸ごと垂らし、いくらは軍艦から皿へとあふれ出るように盛り付けられます。繊細な隠し包丁が入っているため、巨大でありながら歯切れが良く、口の中でシャリと見事に調和する計算が施されています。