犯罪心理の冷酷なリアリズムを映像表現へと昇華させた巨匠といえば、映画監督デヴィッド・フィンチャーの右に出る者はいない。未解決事件の迷宮に囚われた新聞記者や刑事たちの狂気的な執念を描いた傑作『ゾディアック』は、事件の真相究明がいかに人間の精神を蝕むかを冷徹に描ききった。
さらに彼の監督作である名作ドラマ『マインドハンター』は、70年代後半のプロファイリング黎明期を舞台に、捜査官がシリアルキラーの内面を覗き込むうちに自らの精神の境界線を曖昧にしていく過程を克明に記録した。安易なカタルシスを排し、冷徹な照明設計と徹底的な事実考証で構築された映像世界は、今なお後続のクリエイターたちにとって越えられない金字塔であり続けている。