時計の針を少し巻き戻そう。藤本は同志社大学から早稲田大学へ進学し、瞬く間に学生運動の中心へと躍り出た。全日本学生自治会総連合のトップに立ち、共産主義者同盟(ブント)の書記長として数万人規模のデモを指揮したカリスマである。
国家権力との全面対決。新宿騒乱、羽田闘争。街頭が黒煙に包まれ、若者たちが未来を本気で変えられると信じていた時代だ。藤本はその最前線でマイクを握り、鋭い言葉で群衆を鼓舞し続けた。しかし、運動は次第に内ゲバや過激化へと傾斜し、行き止まりの壁に激突する。
逮捕、そして獄中での長い孤独。冷徹な反省のなかで、藤本は気づいた。制度を暴力で倒したところで、人間の暮らしそのものが根腐れしていては何の意味もない。都市の論理で世界を語る限界を痛感した彼は、出獄後、政治闘争の舞台から完全に身を引き、全く異なる戦場へと舵を切る。「土」の世界へ飛び込んだのだ。