発端は、都内の老舗レコーディングスタジオの倉庫から見つかった1本のオープンリールテープだった。そこには、1970年代半ば、絶頂期にあった藤圭子が極秘裏に録音していたとされる、未発表のブルース調の楽曲が収められていた。掠れた、しかしどこか濡れたようなその歌声は、半世紀の時を経てもなお、聴く者の肺腑を抉るような生々しさを保っている。
この音源の存在が明らかになると同時に、ネット上では「若き日の宇多田ヒカルの歌声に酷似している」との声が噴出した。ざらついたハスキーボイスの奥にある、強烈なビブラートと哀愁。それはまさに、私たちが知るあの歌姫のルーツそのものだった。