群緑の美しさを解明するには、地質学的な視点が欠かせない。この色彩の正体は、銅の二次鉱物である。青を司る「藍銅鉱(アズライト)」と、緑を司る「孔雀石(マラカイト)」が極めて近い環境で生成される現象に着目した先人たちが、これらを緻密に調合することで誕生させた。
化学的にはどちらも塩基性炭酸銅だ。結晶構造のわずかな違いが、劇的な色の差異を生み出す。岩絵具の製造現場では、原料となる原石をハンマーで砕き、水簸(すいひ)と呼ばれる工程で粒子の大きさを選別する。
粒子の粗さが色合いを決定づける。粒子が粗いほど光を深く吸収し、濃く重厚な群緑となる。逆に粒子を細かく粉砕していくと、光の乱反射が増え、白みを帯びた淡い青緑へと変化する。この微妙な粒度変化をコントロールする技術こそが、職人の腕の見せ所だ。