この奇妙な言いまわしのルーツを辿ると、江戸時代中期の庶民社会に突き当たる。文献上の初出とされるのは、安永年間(1770年代)の狂歌や川柳の記録だ。当時からすでに「そんな間抜けなことをするくらいなら、豆腐の角で命を絶て」という、自虐や他者への軽妙なツッコミとして定着していた。物理的に不可能な行為を命令する修辞法は、日本語学・言語文化の視点からも極めて稀有な構造を持つ。
真意は明白だ。本気で相手の死を望んでいる人間は、豆腐を持ち出したりしない。「お前の言動は豆腐の角で死のうとするくらい滑稽だ」という痛烈な皮肉でありながら、相手に逃げ道を残すクッション言葉。刃物を突きつける代わりに豆腐を差し出す。この言語的マジックこそが、殺伐とした都市生活の中で摩擦を避ける江戸っ子の粋(いき)だった。 (出典: 豆腐 の カド に 頭 ぶつけ て(Yahoo!ニュース))