1980年代、若者たちの挫折と葛藤を生々しく描いて社会現象を起こしたTBSのドラマ『ふぞろいの林檎たち』。四流大学に通う冴えない若者たちが、学歴社会や無力感に打ちひしがれながらも愚直に生きる姿は、当時の日本中に強烈な共鳴を広げた。サザンオールスターズの楽曲をバックに流れる不器用な日常は、過剰なドラマチックさを排したからこそ、視聴者の現実に痛烈に突き刺さったのだ。
手腕はTBSだけに留まらない。NHKで放映された数々の男たちのドラマや家族劇においても、人間描写の緻密さは群を抜いていた。『男たちの旅路』に代表されるNHKの歴史的作品では、戦争を経験した世代と戦後世代との断絶、そして福祉や高齢化といった社会の歪みを真っ向から描き出した。エンターテインメントの枠に収まらない重厚な問題提起は、日本のテレビドラマ史における確固たる礎となった。