ハリウッドのアクション大作が描く動の極致に対し、静の境地で世界を陶酔させたのが役所広司だ。ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』で見せた、言葉を削ぎ落としたトイレ清掃員の日常。木漏れ日に目を細め、静かに微笑むその表情一つで、カンヌ国際映画祭最優秀男優賞をはじめとする国際的な栄誉を独占した。日常の些細な機微を至高の芸術へと昇華させる芝居は、長年培われた圧倒的な人間観察と引き算の美学から生まれる。
一方、骨太な人間ドラマから緊迫感あふれるサスペンスドラマまで、作品の重力を一気に引き締めるのが佐藤浩市だ。父親である名優・三國連太郎の影を軽やかに超え、日本アカデミー賞協会の歴史にも深く名を刻んできた彼が纏うのは、どこか泥臭く、それでいて圧倒的に色気のある人間臭さだ。組織の狭間で葛藤する刑事、過去に傷を持つ男。彼が画面に現れるだけで、物語に逃れられないサスペンスとリアリティが立ちのぼる。