ビジネスの現場やSNSで定期的に噴出するのが、「学歴は東大なのに現場では使えない」という辛辣なバッシングです。なぜこの言説はこれほどまでに根強く繰り返されるのでしょうか。その裏には、能力の欠如ではなく構造的なミスマッチが存在します。
東京大学大学院の本田由紀教授が東大卒業生2,437人を対象に実施した大規模調査では、驚くべきことに東大OBの約4割が「学歴は役に立っていない」と回答しています。東大生自身が学歴の万能性に疑問を抱いている実態は、世間一般の認識と激しい乖離を見せています。
現場で東大卒が使えないと言われる理由を掘り下げると、主に3つの構造的障壁に行き当たります。
- 「正解の導出」と「課題の設定」の断絶:受験戦争は「用意された問題に対し、最短距離で唯一の正解を出す」訓練です。しかし実社会のビジネスでは「何が問題なのかを定義し、正解のない泥臭い合意形成を図る」能力が求められます。このルール変更に適応できない場合、思考停止と見なされてしまいます。
- 減点回避の完璧主義とアジャイル思考の衝突:東大生の多くは減点を極度に恐れる傾向があります。未完成の段階で60点のプロトタイプを出し、現場でフィードバックを受けながら修正していくスピード感が求められる環境下では、「100点の論理構成ができるまで動けない」慎重さが「フットワークが重い」と評価されがちです。
- 周囲の過度な期待が生む認知バイアス:「東大卒ならこれくらい初見でできて当然」という職場の過剰なハードルが、少しのミスや不器用さを「期待外れ」として過大に印象付けてしまいます。一般社員なら見過ごされる試行錯誤が、学歴の看板ゆえに拡大解釈されてしまうのです。
東大卒の性格の傾向として、感情論を排した極めてロジカルな議論を好む点が挙げられます。しかし、組織は感情を持った人間で動いています。「正しいことを言っているのに、なぜか周囲が動いてくれない」という壁にぶつかり、孤立してしまう若手東大卒は少なくありません。