近年、将棋を取り巻く環境は激変した。「やねうら王」をはじめとする超高性能なオープンソース将棋エンジンの進化と、コンピュータ将棋協会(CSA)を中心とした技術革新により、誰もが自宅のPCで最高峰の知能を活用できるようになった。
八冠を制覇した藤井聡太を筆頭に、現代のトッププレイヤーたちはAIが提示する精緻な評価値と最善手をもとに序盤を組み立てる。その影響は24の対局室にも色濃く反映されている。かつては奇襲とされた筋がAIによって再評価され、深夜の対局で突如として披露されることも日常茶飯事だ。
しかし、どれほどAI研究が進もうとも、対局ボタンを押した瞬間に問われるのは指し手自身の決断力だ。60秒の秒読みの中で、心拍数を上げながらマウスをクリックする人間の生々しい葛藤。最先端のAI定跡と、土壇場の人間味。その二つが盤上で火花を散らす光景こそ、現代の対局場が放つ最大の魅力といえる。