原田芳雄という俳優を語る上で欠かせないのが、後輩・松田優作との熱烈な関係です。70年代に彗星のごとく現れた松田優作さんは、原田さんの型破りな芝居とワイルドな風貌に心酔し、公私にわたって「芳雄さん」と慕い続けました。
優作さんのトレードマークとなった長髪、ジーンズ、気だるげでありながら爆発力を秘めたアナーキーな佇まいは、初期の原田芳雄スタイルから多大な影響を受けたものです。二人が強烈な火花を散らした代表作が、黒木和雄監督による1974年の映画『竜馬暗殺』でした。原田さんが野性味と泥臭さに満ちた坂本竜馬を演じ、優作さんが盟友の中岡慎太郎を熱演。従来の歴史劇を根底から覆す荒々しいリアリズムは映画界に激震を走らせ、今なおカルト的な人気を誇ります。
夜な夜な原田さんの自宅に押し掛けては映画論や演技論を朝までぶつけ合い、時に殴り合い寸前の激論を交わすほど濃密だった二人の絆。1989年に優作さんが40歳の若さで早世した際、原田さんは人目を憚らず号泣し、棺を担いで旅立ちを見送りました。魂の師弟とも呼べる二人の交情は、日本エンタテインメント史に刻まれた美しい伝説のひとつです。