宮崎県は鹿児島県に次ぐ全国有数の養鰻(うなぎ養殖)王国として知られています。その本場において、トップクラスの知名度を誇るのが佐土原町に暖簾を掲げる「うなぎの入船」です。連日巻き起こる大行列の根底には、徹底した素材へのこだわりと、長い歴史に裏打ちされた独自の調理哲学が存在します。
入船で使用されるうなぎは、熟練の職人が確かな目利きで選別した国産の上質な個体のみ。地下から汲み上げた清らかな水でしっかりとうなぎを締め、臭みを極限まで抜く前処理が施されます。焼きの工程では、強火の備長炭を用い、皮目をパリッと香ばしく焼き上げつつ、身の中に芳醇な脂と水分を閉じ込める「地焼き」の技術が冴え渡ります。蒸しを入れない関西風の力強さを持ちながら、身は驚くほどふっくらと仕上がる技術は、まさに職人技の結晶です。
さらに、明治27年の創業以来注ぎ足されてきた秘伝ダレは、九州特有のコク深い甘みと醤油のキレが絶妙な調和を保っています。炭火で燻されたタレの香りが立ち上る瞬間、待ちわびた客の食欲は一気に最高潮へと達します。この味を求めて県内はもちろん、遠く関東や関西、インバウンドの旅行者までが足を運ぶため、行列が途絶えることはありません。