連載当時、双葉社が発行する『漫画アクション』の誌面において、本作の立ち位置は極めて異例だった。派手なアクションや劇的なサスペンスが主流を占めるなか、中年男の自炊と世相への毒舌を延々と描く企画は、漫画アクション編集部内でも大きな賭けだったという。
当時の編集担当者たちの間では、「派手な事件は何も起きないが、とにかくネーム(脚本)が圧倒的に面白い」という確信があった。弘兼自身が日々の暮らしで感じた疑問やこだわりをダイレクトに投影した作風は、作家と編集部が商業主義の枠組みを超えて挑んだ実験作でもあった。結果としてその生々しいリアリティが、何十年経っても色褪せない普遍性を獲得することになったのだ。