SF映画の金字塔『インターステラー』では、巨大ブラックホール「ガルガンチュア」の強大な重力場によって生じる時間の遅れがスリリングに描かれた。地球上に残された人々と、ブラックホール近傍の惑星を探査する主人公たちとの間では、時間の進み方――すなわち時間軸という周期運動の位相が決定的にズレていく。スクリーンに映し出される切ないドラマの根底には、相対論的な位相の非同期がある。
一方で、現代数学の最前線に目を向けると、「位相」という言葉はさらに抽象的で力強い概念へと飛躍する。それが位相幾何学(トポロジー)だ。
トポロジーの世界では、物体の正確な長さや角度、硬さは一切問われない。ゴムのように連続的に伸ばしたり縮めたりしても保たれる「空間のつながり方」だけに着目する。コーヒーカップとドーナツが「穴が1つ空いた立体」として同位相(同相)であるとされる有名な話は、この幾何学の柔軟性を象徴している。
この位相幾何学の考え方は、近年では物性物理学の分野で「トポロジカル絶縁体」や量子コンピュータの安定した素子設計に応用され、ノーベル物理学賞の対象となるなど熱い注目を集めている。単なる波のズレから始まった位相の概念は、空間の根本構造を解き明かす究極のフレームワークへと進化を遂げている。