ピータンの最大の特徴である「透明感のある黒褐色の白身」と「ドロッとした深緑色の黄身」は、火を通す加熱調理によって作られたものではありません。常温下におけるアルカリ熟成という化学変化によって生み出されています。
伝統的なピータンの作り方・製法では、生石灰(酸化カルシウム)、木灰、炭酸ナトリウム、食塩、そしてお茶の煮汁などを混ぜ合わせた泥状のペーストを生卵の殻の周りに均一に塗り込みます。その上から籾殻(もみがら)をまぶして卵同士がくっつくのを防ぎ、甕(かめ)などの密閉容器に入れて2〜3ヶ月ほど冷暗所でじっくり寝かせます。
この熟成期間中に、殻の微細な気孔(空気穴)からアルカリ成分が卵の内部へと徐々に浸透していきます。卵白に含まれるタンパク質は強いアルカリに触れると構造が変化し、熱を加えなくても水分を抱え込んだままゲル化(ゼリー状に凝固)します。
白身が黒くなる最大の理由は、タンパク質が分解されて生じたアミノ酸と、卵内部の微量な糖分が反応する「メイラード反応」です。肉を焼いたときの焦げ目や熟成味噌が黒褐色になるのと全く同じ現象が、アルカリ環境下で長期間かけて進行するため、あの深い琥珀色から黒褐色へと変化を遂げます。黄身が深緑色や灰色を帯びるのは、卵黄中の鉄分とタンパク質由来の硫黄が結びつき、硫化鉄が生成されるためです。
なお、現代の工場生産では泥を塗る伝統製法に加え、温度とアルカリ濃度を厳密に管理した「調味液(水溶液)」に一定期間浸漬する製法(液漬け法)も広く採用されており、衛生面と品質の安定化が進んでいます。