パリ7区にオープンした「Restaurant KEI」。そのフロアを支配する空気感は、千尋氏の細やかな目配りによって作られた。フランスの高級店において「マダム」の存在は店の格を左右する極めて重要なポストだ。彼女は日本人らしい繊細なおもてなしの心と、フランス人が求めるプロフェッショナルな毅然さを完璧に融合させた。
客の好みを完璧に把握し、ワインのペアリングから空間の温度調整に至るまで、妥協は一切許さない。厨房から聞こえる怒号のような緊張感を、フロアでは優雅なクラシック音楽のように変えてみせる。その圧倒的な現場力が、厳しいパリの美食家たちをリピーターに変えていった。