日本の警察の頂点に立つ警察庁や、最大の警察組織である警視庁も、この事態を放置してきたわけではない。相談窓口の設置やハラスメント防止ガイドラインの改定など、表面的な対策は打たれてきた。だが、階級社会という絶対的なピラミッド構造においては、現場の教官や助教が持つ権限が極めて大きく、指導とイジメの境界線が現場の裁量に委ねられすぎているのが実情だ。
教育の名の下に行われる理不尽な懲罰や精神的追い込みは、本当に強い警察官を育てるために必要なプロセスなのだろうか。前線で命を張る職務の性格上、ある程度の負荷は不可欠としても、人権を無視したハラスメントは志ある若者の未来を摘み取るだけに終わる。警察機構全体がこの構造的課題に向き合わない限り、若手警察官の離職歯止めや組織の信頼回復は到底覚束ない。