「ブルーボーイ事件」とは、1965(昭和40)年に東京都内の産婦人科医師が、戸籍上男性である3名に対して除睾術(睾丸摘出手術)などを施したことが発覚し、優生保護法(現・母体保護法)違反の容疑で逮捕・起訴された刑事事件です。当時、東京・新宿などの歓楽街で女装して働く男性やトランスジェンダー女性が「ブルーボーイ」と呼ばれていたことから、マスコミによってこの名称で広く報道されました。
事件の核心は、身体の性を心の性に一致させたいと切望する当事者に対し、適切な医学的プロセスを経ずに外科手術を行った点にありました。当時は「性同一性障害」という医学的概念自体が国内で認知されておらず、社会的には単なる「同性愛」や「性的倒錯」として片付けられていた時代です。精神的な苦痛を抱えた当事者たちが駆け込んだ先が、問題となった産婦人科クリニックでした。
警察および検察は、正当な医療目的のない生殖器の切除は旧優生保護法第28条(正当な理由のない生殖不能手術の禁止)に抵触すると判断。日本で初めて「性転換手術の違法性」が法廷で本格的に争われる前代未聞の事態へと発展しました。