ネオン管の鈍い光、カセットテープのテープヒスノイズ、そして80年代の都市生活を描く視覚世界。いまやグローバル現象となった昭和レトロブームの真実味は、実に奇妙な心理現象の上に成り立っている。当時を生きていない世代が、自ら経験したことのない時代に強い郷愁を感じているのだ。
音楽領域で言えば、世界的な再評価が進むシティ・ポップはその象徴的存在だ。洗練された都市の哀愁と複雑なコード進行が合致し、海外のリスナーまでもが「存在しない過去」に浸る。ノスタルジーとは単なる思い出の再生ではなく、現代の過剰なデジタル社会からの避難場所として機能している。