自閉スペクトラム症当事者であり、世界的な動物学者としても知られるテンプル・グランディン博士は、自らの著作や講演活動を通じて「言葉ではなく写真や映像で思考する」という独特の脳内世界を自叙伝的に明かしてきた。彼女の視覚世界では、細かな色の明暗や光の反射、複雑な影のパターンといった情報が、超高画質な映像データとして脳内にダイレクトに蓄積されていく。
一般の社会が「背景」として見落としてしまう微細な色の移り変わりが、彼女の脳には主役級の情報として捉えられる。グランディン博士のこうした発信は、世界の研究者たちに強いインパクトを与えた。視覚過敏を単なる短所や生きづらさとして片付けるのではなく、変化や異常をいち早く見抜く高度な視覚的知性として捉え直す新しい視点を提供したのだ。