近年の歴史ファンの間で北条氏への関心が爆発的に高まった最大の起爆剤は、大ヒット漫画およびアニメ作品『逃げ上手の若君』の存在だろう。物語の主人公は、高時の遺児である北条時行だ。鎌倉幕府滅亡という絶望的な淵から逃げ延び、北条家の再興を賭けて立ち上がる若き英雄の物語が、若年層を中心に絶大な支持を集めている。
このエンターテインメントの世界的ヒットは、父である北条高時の描き方にも大きな変化をもたらした。作中での高時は、虚無感と異様な色気を漂わせる複雑なキャラクターとして表現され、従来の単なる「バカ殿」という記号的解釈を完全に打ち砕いた。高時が最後に示してみせた覚悟や、子である北条時行へと受け継がれた執念の血脈に対し、視聴者は深い同情と関心を寄せるようになっている。
アニメの世界的反響に伴い、聖地巡礼として鎌倉の史跡を訪れるファンが急増中だ。滅びの美学と一族の絆を軸にした新たな物語の提示が、古典的な歴史像をアップデートする強烈なドライビングフォースとなっている。