「見た目さえ気にしなければ、このまま放置しても生命に別条はないのか」という疑問に対し、医学的な答えは「患者の年齢と健康状態によって180度異なる」となります。結論として、クモ状血管腫を放置しても大丈夫かという問いの分岐点は、患者が小児・妊婦であるか、それ以外の成人であるかです。
小児科領域において、健康な幼児や学童期の児童にクモ状血管腫が見られる割合は10〜15%前後に達します。皮膚が極めて薄く毛細血管が透けやすいためであり、内臓疾患を伴うケースは極めて例外的です。さらに重要な事実として、クモ状血管腫は子供の自然消退が十分に期待できる疾患です。思春期を迎えて皮膚の角質層や真皮が肥厚し、ホルモン環境が安定する過程で、特別な処置を施さずとも自然に色が薄れ、消失していく例が大多数を占めます。そのため、小児期においては患部を引っ掻いて出血させない限り、積極的な切除を行わず経過観察を選択するのが標準的です。
同様に、妊娠に伴って出現した病変も、出産後2〜6ヶ月以内にホルモン動態が平常値へ戻るにつれて約90%が自然退縮します。しかし、ホルモン要因のない成人男性や、妊娠していない女性に突如として出現し、数ヶ月経過しても消退しないケースでは自然治癒は望めません。内臓疾患のスクリーニングを怠ったまま放置することは、潜在的な肝障害の進行を見逃すリスクと同義です。