長年、ネットや一部の語りぐさとして広まってきたのが「ガガーリンは宇宙で『神はいなかった』と語った」という説だ。この噂の真相を探ると、冷戦期の政治的プロパガンダが色濃く影を落としていることが見えてくる。
実際の交信記録のどこを探しても、ガガーリン自身が宇宙空間で「神を探したが見当たらなかった」と発言した記録は存在しない。この発言は、当時のソ連最高指導者であったニキータ・フルシチョフが党の演説で無神論を推進するために捏造・引用した言葉が、いつしかガガーリン本人の発言としてすり替えられたというのが真相だ。一人の宇宙飛行士の純粋な観察記録が、時代の政治的思惑によって捻じ曲げられて拡散した典型例と言える。