女性の月経周期は、脳と卵巣が緻密な情報伝達を行うことで維持されています。その司令塔を担うのが、脳の間脳に位置する「視床下部」です。視床下部は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を分泌し、下垂体を経由して卵巣へと指令を送り、黄体ホルモンと卵胞ホルモンという2つの女性ホルモンを周期的に分泌させます。しかし、視床下部は自律神経の中枢でもあり、感情の起伏、過労、睡眠不足、急激な体重変化といったあらゆる負荷の影響をダイレクトに受けてしまいます。
過度な心理的負荷がかかると、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)やコルチゾールといったストレスホルモンが過剰に分泌されます。これらが視床下部の正常な働きをブロックし、卵巣への指令が途絶えてしまう病態が視床下部性排卵障害です。この現象は医学的に見れば、飢餓や外敵の脅威から個体を守るために備わった生体防御反応に他なりません。生命の維持が優先される極限状況下では、身体が生殖機能を一時的にシャットダウンさせて自分自身を守ろうとするのです。
さらに、自律神経の乱れと月経不順は表裏一体の関係にあります。交感神経が優位な緊張状態が続くと末梢血管が収縮し、子宮や卵巣への血流が著しく低下します。これにより卵胞の発育が停滞し、排卵が先送りされることで、結果として生理が遅れるストレスと原因の直接的な引き金となります。