日本のうどん文化の二大巨頭ともいえる「讃岐うどん」と「稲庭うどん」。両者は同じ小麦粉と塩水を原料としながら、アプローチにおいて完全な対極に位置しています。
讃岐うどんの真骨頂は、生地を足で踏み込んでグルテン組織を緻密に鍛え上げる「手打ち・足踏み製法」にあります。包丁で太く切り落とされた麺は、中心部に強い抵抗感を持つ「剛麺」となり、ガシガシと噛みしめる快感と強い小麦の風味を味わうのが醍醐味です。
対する稲庭うどんは、生地を一切刃物で切り落とさず、縒(よ)りをかけながら手作業で極限まで引き伸ばす「手延べ製法」を貫きます。グルテン組織が一定方向に整然と並ぶため、麺の表面が極めて平滑になり、摩擦のない喉越しが生まれます。「噛んで味わう讃岐」に対し、「喉を滑らせて楽しむ稲庭」。目指す美学の違いが、麺の太さやコシの質感にそのまま表れています。