田村正和の名を語る上で欠かせないのが、その華麗なる血筋と泥臭い下積み時代です。時代劇スターとして昭和の映画界を席巻した巨星・阪東妻三郎の三男として生まれた彼は、幼少期から映画の撮影現場を身近に感じながら育ちました。しかし、父の光芒があまりにも大きかったがゆえに、二世俳優としての苦悩もまた深いものでした。
デビュー初期、大手映画会社である松竹に入社したものの、当時は自身の個性を模索する時期が続きます。映画の衰退とテレビの隆盛という激動の時代にあって、彼は映画からテレビへと活躍の場を果断に移しました。サイレント時代から続く殺陣の血脈を受け継ぎつつも、自身の静かでニヒルな魅力を研ぎ澄ませていったプロセスこそが、後の大成功への礎となったのです。