この地に鎮座する角振神(つのふりのかみ)とは、一体いかなる神なのか。その名は「頭に生えた角を激しく振りかざし、あらゆる悪霊や邪気を打ち払う」という荒々しい神徳に由来する。
平城京の設計者であり、奈良の歴史の礎を築いた藤原不比等。彼が主導した春日大社の創設と権力基盤の確立において、この強烈な祟り封じの神の存在は不可欠であったとされる。政敵の怨霊を恐れた古代の権力者たちは、国家の安寧を守るための防壁として、この地に強烈な神威を求めたのだ。
春日大社との深遠なつながりを紐解くと、古代人がいかに目に見えない恐怖と対峙していたかが浮かび上がる。ただ平穏を祈るだけでなく、毒をもって毒を制するような呪術的防衛線。角振神への信仰は、古代政治のリアリズムそのものを物語っている。