プロ入り直後、中谷を襲ったのは悪夢のようなアクシデントだった。練習中の怪我によって左目を負傷し、網膜剥離と視力低下という打撃選手・捕手にとって致命的な試練に直面する。普通であれば引退を余儀なくされるほどの絶望。しかし、彼は決して折れなかった。過酷なリハビリと手術を経てグラウンドへ復帰し、楽天、巨人と渡り歩きながら貴重なバックアップ捕手としてチームを支え続けた。
このプロ生活での苦闘こそが、指導者・中谷仁の底流にある「寄り添う力」の源泉だ。エリートとしての輝かしい実績だけでなく、挫折と痛みを誰よりも知るからこそ、怪我に悩む選手や控え選手の痛みに心から共感できる。グラウンドで見せる穏やかさと鋭さを併せ持った眼光には、修羅場をくぐり抜けてきた男だけが持つ深い説得力が宿っている。