本作の前半で強烈なインパクトを残すのが、岩手県をはじめとする三陸沿岸でのアワビ密漁ルートの真相です。冷たく荒れた夜の海にウェットスーツと高性能な潜水機材を身にまとった「モグリ(密漁ダイバー)」たちが潜り、短時間で数百万円相当のアワビを根こそぎ獲り尽くします。
過酷な海中作業を担うダイバーの背後には、見張り役、運搬役、そして買い取り役となる暴力団幹部が控える完全な分業体制が敷かれています。さらに驚くべきは、獲れた密漁アワビが即座に「正規の伝票」を介して合法品へとロンダリングされる手口です。
地元の加工業者や流通ブローカーが関与することで、産地偽装や書類改ざんが行われ、東京をはじめとする大都市圏の高級料亭や百貨店へと何食わぬ顔で出荷されていきます。三陸の豊かな自然が育んだ海の宝が、暴力団の強固な資金源へとすり替わる構図は極めて根深い現実です。