美空ひばり『車屋さん』が色褪せぬ理由|粋な都々逸と奇跡の歌唱

美空ひばり『車屋さん』が色褪せぬ理由|粋な都々逸と奇跡の歌唱

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『車屋さん』の最大の聴きどころは、なんといっても江戸の庶民文化を象徴する都々逸(七・七・七・五調)を巧みに取り入れた歌詞構成です。「急いで急いで町までおくれ」と俥夫に頼む滑稽味のある導入から、楽曲は一転して大人の恋煩いと執着を歌い上げる都々逸パートへと切れ目なく移行します。

歌詞の意味を深く読み解くと、単なる陽気な道中ソングではないことが浮き彫りになります。意地を張りながらも惚れてしまった相手への未練、振り切ろうとしても断ち切れない情念――。明治から大正にかけて人力車が行き交った花街の情景を舞台に、道ならぬ恋に身を焦がす女の心理が、俥夫の足音を模したリズミカルな手拍子と「えさっさ」の掛け声の合間に鮮やかに差し挟まれているのです。

元ネタとなった都々逸の口語的な語り口を、美空ひばりは決して重苦しく歌うことはありませんでした。語尾のヴィブラートを絶妙に抜き、小鼻にかかるような甘さと鼻濁音の美しさでサラリと流す。この「重い情念をあえて軽やかにいなす」表現手法こそが、日本の美意識である「粋(いき)」の神髄であり、聴き手に心地よい余韻を残す理由となっています。

伊藤 翔太
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伊藤 翔太

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。