2005年に公開された映画『HINOKIO』で、彼女が手にしたのはメインキャストである工藤純役だ。この役をめぐって行われたオーディションには、全国から1000人を超える応募が殺到した。有名プロダクションの期待の新人から演技経験豊富な子役までがひしめき合う中、オーディション会場でひときわ異彩を放っていたのが、当時ヒラタオフィスに所属して間もない多部未華子だった。
過剰な自己アピールをする志望者が多い中、彼女は静かに順番を待ち、カメラの前に立った。演技が始まった瞬間、その場にいた監督やプロデューサーの空気は一変する。セリフの行間を漂わせる繊細な眼差しと、役にすっと入り込む集中力。男の子のようでありながらどこか切なさを秘めた難しい役柄を、14歳とは思えぬ深みで演じ切った彼女は、審査員満場一致で大役を射止めたのである。