80年代のポップスシーンを語る上で欠かせないのが、対極の魅力を放った松田聖子との対比である。太陽のような光、可憐なフリル、王道のアイドル像を提示した松田聖子に対し、中森明菜が選んだのは「影」であり「モード」だった。
漆黒のドレスや、マニッシュなスーツスタイル。影を彩るようなカラーパレットは、当時の80年代アイドルの枠組みを完全に破壊した。甘さに頼らない、自立した女性像。傷つきやすさと強さが同居する歌声に、エッジの効いた洋服が見事にシンクロしたとき、彼女のステージは単なる歌唱からひとつの芸術作品へと昇華したのである。