主人公を極限まで追い詰める父・星一徹の存在なくして、この巨大な物語は成立し得ない。大リーグボール養成ギプスをはじめとする狂気的なトレーニングは、現代のスポーツ科学やコンプライアンスの視点からはおよそ肯定できない代物だ。だが、この極端な過酷さこそが、後に漫画業界全体へ浸透していく「スポ根」なる一大ジャンルの骨組みを創り上げた。
父の理不尽なまでの厳しさは、単なる虐待の描写として片付けられるものではない。戦後の混沌を生き抜いた旧世代が、己の果たせなかった夢を次世代に託す重たい祈りでもあった。課せられた重圧と戦いながらマウンドに立ち続けた少年の姿は、急速な経済成長の陰で葛藤していた当時の日本人の精神像と強烈にシンクロしていたのだ。