税務申告の現場では、ルールを知らずに駐車場代を算入してしまう事例が後を絶ちません。都内の税理士事務所関係者や、実際に税務署からの指摘を受けた納税者の証言から、その生々しい実態が浮き彫りになっています。
「長期入院中の家族を毎日見舞うために病院の地下駐車場を利用し、年間で約15万円の駐車料金を支払っていました。領収書をすべて添付して確定申告を行ったところ、初夏になって税務署から電話が入り『通院ではなく付添いや見舞いの駐車場代は一切対象外です』と告げられ、全額を差し引いた修正申告書を出さざるを得ませんでした。還付されると当てにしていた金額が消え、追徴課税の通知を見たときは激しい徒労感に襲われました」(50代・会社員男性)
また、税理士が語る現場の実態も極めてシビアです。大手税理士法人の資産税担当者は次のように解説します。
「マイカー通院による確定申告の控除をめぐる相談は、確定申告期に最も多い誤解の一つです。申告書を提出した数日後に指定口座へ還付金が振り込まれると、納税者の方は『税務署の審査をパスした』と錯覚しがちです。しかし、近年の国税当局はデータ照合の自動化を進めており、申告初期は形式的な要件しかチェックしていません。還付金の支払いから半年から1年ほど経過した後に、記載された交通費の内訳や領収書の提示を求める通知を発送します。そこで駐車場代やガソリン代の混入が判明すれば、即座に否認され、過少申告加算税や延滞税が上乗せされるリスクを背負うことになります」
「近所の人も申告して通ったと言っていた」という話は、単にまだ調査の手が入っていないか、金額が極めて少額で見過ごされているに過ぎません。脱税や申告漏れを意図していなくとも、制度上の規定を逸脱した処理は確実に自分自身の首を絞める結果につながります。