レース当日の早朝、まだ闇に包まれた大手町や箱根芦ノ湖の特設放送ブースでは、緊迫した空気が漂っている。アナウンサーたちが手にしているのは、びっしりと手書きのメモで埋め尽くされた分厚い「取材ノート」だ。選手一人ひとりの過去のレース記録はもちろん、監督の言葉、性格、さらには家族とのエピソードまでが網羅されている。
中継を担当するアナウンサーは、主催者である関東学生陸上競技連盟が提供する公式データだけに頼らない。夏合宿の現地取材から秋の予選会、日頃の合同練習にまで脚を運び、泥臭く集めた生の情報こそが、本番のギリギリの局面で一言の「深み」となって立ち現れる。数秒の襷リレーの瞬間に掛けられる情熱の裏には、膨大な時間と労力が注ぎ込まれているのだ。