街の荒廃を後戻りできないレベルまで加速させたのが、通称「ゾンビドラッグ」と呼ばれる危険物質の蔓延です。その中心にあるのが、猛毒に近い強さを持つ合成オピオイドのフェンタニル問題です。
フェンタニルは極めて微量(わずか2ミリグラム程度)で致死量に達するため、過剰摂取による呼吸停止で命を落とす人が全米で年間数万人規模に達しました。さらに事態を悪化させたのが、2026年頃から急増した「キシラジン(通称:トランク)」の混入です。
キシラジンは本来、牛や馬などの大型動物に使われる非オピオイド系の鎮静剤です。麻薬密売組織がフェンタニルの効果を持続させる「混ぜ物(かさ増し材)」として使い始めた結果、極めて恐ろしいゾンビドラッグの影響が顕在化しました。
キシラジンを摂取すると、血圧や心拍数が極端に低下して昏睡状態に陥るだけでなく、血管が収縮して皮膚組織に潰瘍や重度の壊死を引き起こします。腕や足の傷口が骨に達するほど腐敗し、最悪の場合は手足の切断を余儀なくされる中毒者が後を絶ちません。オピオイド拮抗薬である「ナルカン(ナロキソン)」が効きにくい点も、医療従事者を悩ませる深刻な要因となっています。