油女一族の中でも、燐壊虫を体内で育み扱える者は極めて稀である。トルネの父・油女シクロから受け継がれたこの術は、一族の一般的な蟲使いとは一線を画す異質さを誇る。体表を被覆する無数のナノサイズ昆虫は、わずかに肌が触れただけでも相手の皮膚から侵入し、細胞を爆発的に破壊しながら全身へ増殖していく。
まさに生体兵器そのものだ。解毒できるのは抗体を持つトルネ本人か、限られた医療忍術のみ。素手の体術戦を主体とする忍者にとって、接触=死を意味するトルネとの戦闘は絶望以外の何物でもない。しかし皮肉なことに、この圧倒的な殺傷力こそが、彼を他者との接触から遠ざけ、孤独な死の影へと追い詰める要因となった。