水面に浮かべたインクで模様を作る技法は、9世紀頃の日本で誕生した墨流しが最古の起源とされる。松煙墨と和紙を用いて水面の波紋を捉えるこの技法は、宮廷の料紙装飾として珍重された。日本伝統工芸士会に所属する名工・高橋貞夫氏をはじめとする職人たちは、水面の微風や水流を繊細にコントロールする至高の技術を現代まで絶やすことなく継承している。
一方で、シルクロードを経由して中央アジアから中東へと伝播した技法は、トルコにおいて「エブル(Ebru)」として開花した。20世紀を代表する伝統保持者ムスタファ・デュズギュンマンが確立した幾何学的な花模様や緻密な流線技法は、今なお世界中のアーティストに強烈なインスピレーションを与えている。エブルの文化的・芸術的価値は高く評価され、2014年にはユネスコの無形文化遺産にも登録された。