タブレットとスタイラスペンさえあれば、誰でも簡単に美しいイラストを描ける時代だ。それにもかかわらず、アトリエには鉛筆を削る音と木炭の匂いが充満している。この泥臭いアナログな作業に、なぜ今の若者たちは惹かれるのだろうか。ある受験生は、「デジタルはやり直しが効くけれど、紙に引いた一本の線は消しても痕跡が残る。その『一発勝負』の身体性が、自分の感情を一番表現できる気がする」と話す。
指先だけでなく、肩や腕全体を使ってキャンバスに向き合う。この極めて身体的なプロセスこそが、デジタルの画面越しでは得られない自己との対話を生む。スマートフォンの画面を見つめる時間が大半を占める現代の若者にとって、このリアルな物質との格闘は、むしろ新鮮で贅沢な体験として受け入れられているのかもしれない。